制作風景
MANUFACTURE
手紡
TETSUMUGI
畳み
和紙を繊維の方向と垂直に屏風畳みにする。これを、何枚もまとめて床に置いた上に重しをのせ、紙を落ち着かせる。
切り
洋裁用のルレットで付けた2.5㎜巾の印に定規を当てながら、10枚重ねた和紙をカッターで切る。このときに、上部を3〜4mm切り残すが、和紙の1/2まで到達したら、一度切り落とす。
剥がし
10枚重ねて切った和紙を、上から剥がす。剥がしたら、一度くしゃくしゃに丸めて、また拡げて形を整える。これによって、カッターで切った1本1本がバラバラの方向を向き、この後の作業がやりやすくなる。
揉み
霧吹きを空間に吹き、そのなかで和紙をくゆらせて湿り気を与え、コンクリートブロックの上で軽く力を入れて転がす。手の動きの癖が均一になるよう、紙の左右を変えたり、1本1本がくっつかないように両端を持って拡げる。20〜30分かけて和紙1/2枚分を揉む。
績み
繋がった両耳端を左右互い違いにちぎって一本の長い糸にする。ちぎった端は指に唾をつけて小さく丸める。
撚り
績んだ糸の上に小豆を蒔いて重石にする。1本を引き出しながら、糸車で撚りをかけ、糸を丈夫にする。2.5mm巾の糸の場合、1m間に8回ほど糸車を回転させるが、糸が太いほどに回転数は少なく、細いほどに回転数も多くする。糸に対して回転が不足すると糸が弱くなり、過剰だと糸が固くて美しい風合いが出なかったり、糸が捻れて作業できない、染色しても色が入らないといったことになる。
木枠上げ
和紙5枚分の糸を大枠に巻く。このときに、枠にサランラップを巻いておき、この後蒸したときに木の色が移るのを防ぐ。
蒸し
蒸気の立った蒸し器に木枠ごと入れ、15分ほど蒸す。湿った状態から急に乾燥すると糸が脆くなるので、火を止めてから10時間ほど放置し、その後木枠から外して屋内に吊るしておく。次の作業まで、1〜2日は自然乾燥させる。
製糸
十分に乾燥が済めば、糸が完成する。1本の帯を作成するために必要な量をつくるのに昼夜問わず作業を続けて1ヶ月程度、その後の機織りに2週間程度を要する。
手織
TEORI
括り
布の長さやデザインによって、必要な糸量を割り出して材料を準備する。絣の場合は、織ったときに布に絣模様が現れるよう計算し、糸をビニールテープで括って防染する。
染め
草、花、木の枝葉や実などを採集し、鍋で3〜5回ほど煮出して染液を作り、そこに糸を入れて加熱する。染液に入れる前後、媒染剤(灰汁、食酢、鉄など)を溶かした液に糸を浸すことで糸の染まりを良くし、また、4日以上かけて染色して、糸にしっかりと色を浸み込ませることで色落ちを防止する。手に入りにくい材料は染料店で調達することもある。
枠上げ
織るときの張力に糸が耐えられるよう糊付けして強度を増した経糸を10個ほどの木枠に巻き取る。等分になるように重さを量りながら行う。
整経
整経台の下に並べた木枠から糸を引き出しつつ、必要な経糸の長さと本数を揃えていく。このときに一本交互に糸を交差させて綾を取ることで、あとの作業時に糸の順番が分かるようにする。
仮筬通し
綾の順番通りに筬の一枡に一羽(2本)ずつ糸を通す。これは、次の千切巻のときに巾を一定にすることが目的なので、その作業後には外す。
千切巻
部屋の端に経糸を固定して糸を長く張り、千切に経糸を巻き取る。25メートルほどの経糸を巻き取ることもある。
綜絖通し
経糸を巻いた千切を機織り機にセットし、綾の糸の順番通りに綜絖の小さな穴に一本ずつ通す。糸の順番を間違えると織った時に絡まるので、間違いが無いかこまめに確認をしながら進める。
筬通し
仮筬通しと同じ要領で筬に糸を通す。織るときにはこの筬を手前に引いて、緯糸を布に打ち込んでいく。
小管巻き
経糸の準備と並行して、緯糸の準備も進める。織るときの杼(ひ)にセットする小管に緯糸を巻く。
織り
千切・綜絖・筬と伸びる糸を手前の織付け布に結びつけたら、織り始める。経糸の開口の間に杼を滑り込ませて、筬で打ち付ける動作を繰り返すが、緯糸を一本入れる毎に足の踏木を踏みかえて、踏木と繋がった綜絖の上下運動もしている。織りの作業中は、踏木を踏む順番、筬を打ち込む強さ、経糸の張り具合、経糸が切れていないかなど、同時にいろいろな箇所に気を配らねばならない。
検反
織り上がった布を目視で確認し、織損じがあった場合には、織るように針を動かして糸を入れ、修正する。
仕上げ
京都の湯のし屋に布を送り、縮絨をかけたり、余分な染料を落とすなどして仕上げる。場合によって、この作業を自分で行うこともある。